南相馬にて~しばコラ~

南相馬にて~しばコラ~

「あなたのこれみてこのバイクを買ったのよ!!」と、私が担当した雑誌の記事を切り取って持ってきてくれていた。もうそれはそれは、涙がでそうなくらいうれしかったのでよく覚えている。

出会いは東日本震災後のこと。

喫茶店 林檎

  とあるイベント会場で声をかけて下さった女性は

「あなたのこれみてこのバイクを買ったのよ!!」と、

私が担当した雑誌の記事を切り取って持ってきてくれていた。

もうそれはそれは、涙がでそうなくらいうれしかったのでよく覚えている。

それ以上に、その女性は一度聴いたら忘れない明るい笑い声で強烈なインパクトがあった。

というのも、

「どちらからいらしたんですか?」

「南相馬!」

「林檎って喫茶店やってるから来てね」

とだけ言い残し嵐のように去って行った。

当時震災があったばかりで大変だったはずなのに、そんなことを微塵も感じさせない笑顔だった。

正直何て声を掛ければいいかわからなかった。

言いたいことを言ったらすっきりしたかのように、ぱ~っといなくなっていた。

その時から「南相馬」「林檎」この言葉だけがずっと心に残っていて、いつかお礼を言いに行きたいと思っていた。

  それから時が経ちようやく南相馬へ行けたのが昨年10月

喫茶店 林檎

国道6号はいまだバイクでは通行できない区間があるものの、

高速道路も開通し南相馬までのアクセスも随分楽になっていた、その時のドタバタツーリングはばいく~んGoGo!!の中でもお話しましたが、あれから2度目となる南相馬の林檎へ出掛けた。

  今回は事前に連絡していたのでお店も開いていて、近所のライダーさん3人が

「走りに連れて行ってあげる」と、待っていてくれていた。

前回行った半年前と変わったのは、入れるエリアが広がったこと。

浪江も一部入れるようになっていて、よく走っていたという気持ちの良い道にも連れて行ってくれた。

その道に行く前に行ったのは海側のエリア。

一人で行こうと思っていたが、地元のライダーさんが連れて行ってくれるというのでお言葉に甘えることに。

  前回南相馬に来たとき、あの震災の時のことを聞いていたので、正直怖さもあったけれど、そこにいる方々はもっともっと恐怖や悲しみがあったはず。
一度自分の目でちゃんと見たかった。

一方、連れて行ってくれた方も見せようかどうか迷ったそうだが

「現実を知ってほしい」と、海際のエリアに連れて行ってくれた。

海際ではあったがそこには大きな堤防がつくられ、工事のためのダンプカーが行き来する。

そのためすぐに海は見えず、建物も何もない真っ平らな土地が広がり、大きなテントの中では地元ライダーさんによると、汚染土壌の分別作業が行われているとのことだった。

人が住むエリアでこうした作業が行われていることに驚きとショックがあった。

「震災当時ここは湖のようでね、車や養豚所の豚や牛がいっぱい流れてきたんだ・・・。」

「当時建設業をしてたからね、腰まで水に浸かってポンプで水を出す作業をしていたんだよ。」

もう一人の地元ライダーは、震災時このエリアはたくさんのご遺体があったのを見て以来怖くなり一人では行けなくなってしまったそう。それなのに一緒に来てくださったことに申し訳なさを感じるとともに、ただただ感謝。

「ここは集落でたくさん家があったんだよ。今は跡形もなくなっちゃったけど・・・」

3人それぞれのお話を聞きながら

何と返したらいいのか言葉が見つからず、ただただ、話を聞かせてもらっていた。

その後

最近一部入れるようになった浪江まで走った。

  生活している人がほとんどおらず、建物も震災当時のままに なっているところがほとんどで、時間が止まっているようだった。

さらにその先の立ち入れないエリアはガードレールで区切られ、道の先は草が生い茂りそこに道があるとは気が付かないほどになっている。

「この辺りの県道はいわきまでつながっていてすごくいい道でよく走ってたのに、原発の事故でいい道が走れなくなっちゃったよ。」と話す。

どんな話も暗く話さない。それは外から来た私に気遣ってくれているのかもしれない。

浪江から南相馬に向けて気持ちの良い県道を走り抜ける。

車どおりも少なく、程よくコーナーもあって気持ちよく走れる道だ。

馬事公苑に近づくとの馬の匂いが漂い生命の香りを強く感じた。

  林檎に戻るとママさんたちと夕食会場へ出掛けみんなでバイク話や昔話で盛り上がる。

その帰り道。車の中でママさんがほろりとこぼした

「みんながんばってるんだ。ほんとにがんばってるの。」

「やっぱり原発のこと、みんな心の奥にはいろいろあるんだ。」

「だから、柴ちゃんみたいに他のところから遊びに来てくれると、前みたいにみんなで集まるきっかけになるの。こんなの久しぶりなんだ。」

今回はまた南相馬の人たちに会いたいなという思いで出かけただけだった。

それでもママさんやその周りの方も元気になったと言ってくれる。

それは私も同じで毎回行くたびにママさんや南相馬の方に会うとすごく元気になる。

そこに会いたい人がいるから。理由はそれだけでいいのではないか。ママさんの話を聞いて思った。

何かができるわけではないけれど、私はこれからも南相馬の人たちに会いに行こうと思う。

そこに会いたい人たちがいるから。

南相馬の自慢だという相馬野馬追祭りの季節にもぜひ出かけたいものです。

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